肺がんは、気管、気管支、肺胞の細胞が正常の機能を失い、無秩序に増えることにより発生します。がんは周囲の組織や器官を破壊して増殖しながら他の臓器に拡がり、多くの場合、腫瘤(しゅりゅう)を形成します。腫瘍は肺の局所で腫瘤を作り、さらには隣接する臓器へ浸潤(しんじゅん:がんが周りに広がっていくこと)を起こし、様々な症状を引き起こします。あるいはリンパ節や、遠くの臓器に転移を起こし、最終的には死に至ります。

肺がんの原因としては、タバコや自動車の排気ガス(大気汚染ディーゼル)、アスベスト、鉛、クロムなどがありますが、大部分は不明だとされます。アスベストとの関係が明白な悪性中皮腫と異なり、肺がんには各種の発生原因があるので、肺癌の場合で「喫煙」との関係を聞かれても、石綿との関係を尋ねられる事は少ないのが現状です。つまり、肺がんについては、アスベストが原因であることになかなか気付きにくいといえます。

肺がんの症状に特異的なものはありません。ある程度進行した症例では、なかなか治りにくい咳や胸痛、呼吸時のゼーゼー音(喘鳴:ぜんめい)、息切れ、血痰、声のかれ(嗄声:させい)、顔や首のむくみなどがみられます。しかし、症状で発見されるがんは一般に進んでいることが多く、治療のためには、無症状の内に検診等で早期発見することが大切です。

肺がんであるかどうかを診断するためには、各種の検査が行われます。喀痰細胞診、気管支鏡下生検、細胞診、CT下生検、細胞診などです。
もし医師から「肺がんです」と告知された時には、できれば「アスベストによるものかもしれない」と疑ってみて下さい。
(弁護士 木村夏美)