労災保険給付を受けるためには、①労働者であり、②業務上の災害である必要があります。この記事では②業務上の災害であることの意味について説明します。(①労働者であることの意味についてはこちら→アスベスト疾患と労災保険制度~「労働者」とはどんな人を指すのか)

②業務災害であることとは、病気やけがなどの災害が業務に従事していたことにより生じたことをいいます。石綿肺、原発性肺がん、中皮腫、良性胸膜胸水、びまん性胸膜肥厚の場合、ⅰ業務としてアスベストにさらされる作業に従事していたか、さらに、ⅱそれぞれの病気にかかった原因がその業務によるものといえるかによって判断されます。

このうち、ⅱ病気の原因が業務によるものといえるかについては、アスベストにさらされた期間や病気の状態等それぞれの病気毎に決められている基準を満たしているかで判断されます(ただし、基準を満たしていない場合でも総合的な判断で業務によるものと認められることもあります)。

では、ⅰアスベストにさらされる作業といえるのはどんな場合でしょうか。

厚生労働省労働局長通知の「石綿による疾病の認定基準」は、アスベストにさらされる作業として11項目を定めています。具体的には以下の作業に従事していた場合には、アスベストにさらされる作業に従事していた可能性があります。

≪アスベストにさらされる作業≫

・アスベスト鉱山などでアスベストを含む鉱石や岩石の採掘、搬出又は粉砕その他アスベストの精製に関連する作業。

・倉庫内などにおけるアスベスト原料の袋詰めや運搬作業

・アスベスト製品の製造工程における作業(石綿糸や石綿布などの石綿紡織製品、石綿スレートや石綿セメント管などの石綿セメント製品、ボイラーの被覆やガスケットなどの耐熱アスベスト製品、自動車のブレーキライニング等の耐摩耗性アスベスト製品)

・アスベストの吹きつけ作業

・断熱や保温のための被覆作業や補修作業(断熱パッドの取り付けや取り外し、ボイラーや配管の断熱材の取り付け作業)

・スレート板や断熱材などの切断などの加工(耐火建築物内の電気配線工事、配管工事なども含む)

・アスベスト製品が建材等として使用されている建物の補修や解体作業(耐火被覆の除去作業、耐火建築物の解体作業)

・アスベスト製品が使われている船舶や車両の補修や解体作業

・タルク等の取扱の作業

・以上掲げた作業と同程度以上にアスベスト粉じんにさらされる作業


また、このようなアスベストやアスベストを含有する製品を製造したり、直接取り扱う作業のみならず、直接ばく露を受ける作業の周辺等における作業もアスベストにさらされる作業とされています。

間接的にアスベストにさらされる作業は様々ですが、例えば造船所や工場などでアスベストの粉じんが舞っている中で部品の運搬作業を行っていた場合や、アスベストの吹きつけ作業を行っているすぐ側で塗装作業を行っていた場合などは間接的にアスベストにさらされていた場合に当たると言えます。間接的にアスベストにさらされる作業に従事していた場合は、実際にどのような状況でアスベストにさらされていたのかをはっきりさせること、それだけの資料を集めることが重要なポイントです。

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