アスベスト疾患と労災保険制度
石綿肺、原発性肺がん、中皮腫、良性胸膜胸水、びまん性胸膜肥厚は、厚生労働省によりアスベストによる業務上の疾病(アスベスト疾患といいます)として認められており、これらの病気は、労災認定を受けることで補償を受けることができます。
(なお、これらの病気になっていなくてもアスベストを扱う仕事をしていた場合には健康管理手帳の取得が可能な場合もあります。)
そもそも、労災保険制度とは、労働者災害補償保険法に基づく保険制度で、業務上の災害が発生したときに、労働者が国に対して必要な補償を請求できる制度です。
労災であると認められると、無料で治療を受けられたり、休業補償等の労災保険給付を受けることができます。また、実際に労働災害に遭われた方だけでなく、一定の条件を満たした遺族の方も、遺族補償年金や遺族補償一時金などの労災保険給付を受けられます。
(詳しくはこちら→どんな補償が得られるか 労災制度による補償内容)
労働者の意味
労災保険給付を受けるためには、①労働者であること、②業務上の災害であることの2つの要件を満たす必要があります。この記事では、このうち①労働者であることの意義について説明します。
まず、①労働者であることとは、使用者の支配下で労働の提供を行う者をいいます。正社員であるかないかは関係有りませんので、パートやアルバイトでも労働者にあたります。
経営者、自営業者、請負人、一人親方は原則的に労災保険制度の対象にはなりません。ただし、労災保険制度の特別加入制度を利用している場合は自営業者等の場合でも労災認定を受けることができます。
また、労働者に当たるかは、指揮命令を受けていたかや、賃金の定め方などにより実質的に判断されますので、契約上請負となっていても労働者と認められる場合もあります。
なお、特別加入していない自営業者、工場で働いていた方の家族、近隣住民の方などは、石綿による健康被害の救済に関する法律(いわゆる石綿救済法)に基づく請求をすることができます。
また、仮に会社が労災保険料を支払っていない場合でも、労働者は労災の請求が可能です。労災保険料の支払いは事業主の責任であり、労災保険料を支払っていないことについて労働者には責任はないからです。
②業務災害であることの意味についてはこちらをご覧ください→業務災害の意味~アスベストばく露作業について
(弁護士 山下陽平)
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