国との和解成立のご報告

 以下のとおり、国との間の訴訟において、岐阜地方裁判所民事1部において和解成立しましたので、その内容と結果をご報告を申し上げます。

 本件の特殊性は、石綿工場を運営する企業に直接雇用されている者ではなく、石綿工場に出入りしている事業者に雇用されている労働者の国に対する、損害賠償請求が認められた点にあります。

 

第1 当事者及び関係者

1 原告は,昭和35年4月から約12年間、岐阜県羽島市に所在する建設会社において大工見習いとして、住宅建設に大工として携わった元労働者です。

2 当該建設会社は、一般建築業務を請け負っている会社でした。

第2 原告の石綿曝露と石綿関連疾患

1 原告は,昭和35年4月ころから,当該建設会社に雇用され,ニチアス羽島工場内での建具の修繕や棚などの設置作業のため頻繁に同工場内にて作業しており,石綿粉じんの飛散状況が認められる作業に従事した結果,大量の石綿曝露を受けました。

原告が、建設会社に勤務していたころ、建設会社の代表者とニチアスの社長との仲が良く、ニチアス羽島工場内の簡単な修繕業務が頻繁にあり、原告は同工場内での修繕作業を行っていました。同工場内では、白い埃が沢山舞っている状況でした。

2 原告は,平成25年ころから風邪を引くと咳が止まらないような症状が出るようになり、平成28年10月26日に羽島市民病院を受診しました。医師から肺が白くなっており、今までの作業歴から石綿肺ではないかと言われました。その後、松波総合病院に転医し、検査の結果、原発性肺がんに罹患している旨の診断を受けました。その後、平成29年8月、左肺の上部を切る手術を受けました。この手術で切除した肺の組織を検査された結果、石綿肺に罹患しているとも医師から言われました。

そして、平成30年5月23日付けにて、原発性肺がんの罹患について業務上のものである旨の認定がなされ、労災保険の支給決定がなされています。

なお、松波総合病院での病理診断において、肺内にアスベスト小体を認められているし、地方じん肺診査医は、原告の胸部単純写真やCT画像を読影して、「石灰化胸膜斑」が認められると診断しており、胸膜プラークの存在も肯定されていました。

第3 訴訟提起

そこで,令和元年8月23日、原告は,被告国に対し,国家賠償法1条1項による損害賠償請求権に基づき,訴訟を提起しました。

第4 和解内容

令和2年4月27日、岐阜地方裁判所民事第1部において下記内容の和解が成立しました。

「国は、原告に対し、1265万円、及び平成28年10月26日(原発性肺がんであるとの確定診断がなされた日)から支払い済みまでの遅延損害金を支払う。」

文責 弁護士 見田村勇磨