関西アスベスト京都訴訟判決について
弁護士 水野将也
アスベスト(石綿)が含まれた建材を利用したことなどによって健康被害を被ったとして京都府内の元建設労働者や遺族らが国と建材メーカー32社に総額約10億円の損害賠償を求めた「関西建設アスベスト京都訴訟」の判決が京都地方裁判所で、平成28年1月29日に下りました。
事件を担当した京都地方裁判所は、国及び建材メーカーの責任を認め、国に対して総額1億円あまり、建材企業9社に対しても総額1億1200万円あまりの支払いを命じる原告の全面勝訴といっても良い画期的な判決を言い渡しました。
この判決の重要なポイントは2つです。まず1つめは、国の責任を改めて認めた点です。東京、福岡、大阪の各地裁判決に続き4度目の国の責任を認める判決であり、国がアスベスト対策を怠ったために多くの建設労働者に健康被害が生じてしまったということは、司法ではかなり定着していると評価しても良いと思います。また、この判決では、「専ら屋外作業に従事していた屋根工」に対しても国の責任が認められています。屋外作業であってもアスベストによる健康被害が生じていたことを認めたものであり、その作業内容を問わず建設労働者がアスベスト暴露の危険な状態におかれていたことを認めた点に大きな意義があると言えます。
つぎに2つめですが、この判決は、初めて建設労働者の健康被害に対する建材メーカーの責任を正面から認めました。これは極めて画期的なことであり、アスベストによる健康被害の救済拡大がさらに進むことが期待されます。
なお、この判決では、いわゆる「一人親方」に対する国の責任は認められませんでした。しかしながら、判決では立法府の責任により解決されるべき問題であると述べ、国が解決すべき問題であることを指摘しています。その実態からすれば、労働者であってもいわゆる「一人親方」であっても救済されるべきであることは全く同じであり、両者を区別する合理的な理由は全くありません。
今回の判決は、国の責任が改めて認められたとともに、建材メーカーの責任が初めて認められたものであり、司法は着実にアスベストによる健康被害の救済範囲を広げていっています。司法の場でこのような判断がこの先も続けば、国もアスベストによる健康被害の救済範囲を広げていく強い後押しになるはずです。
司法の場でこのような判断が出ているのは、原告となられた方々や弁護団の先生方の並々ならぬ尽力によるものであり、改めて深い敬意を表するとともに、我々の弁護団としてもアスベスト健康被害の救済の一助となることができるよう更なる研鑽を続ける決意を新たにしました。